第2章 フィリピン留学編
第21話 全財産処分。背水の陣で勝負する
直感を信じて困難だからやる
アッキーがフィリピン留学の話を持ち出す一か月前、私はイタリアにいました。11月にミラノでヨーロッパ最大のオートバイ見本市があるのです。私が輸入しているバイクメーカーのマラグーティー社が出展するので毎年参加しています。
ミラノの帰りにボローニャの会長の自宅に呼ばれました。会長の家は公園の中に建っている大きなお屋敷でリビングだけでも100畳くらいの大きさです。何よりもすごいのは壁にかかっている絵がどれも歴史がありそうなことです。
「らいこうフィリピンのビジネスはどうだい? 上手くいっているか?」
今年の春にお会いした時に話しをしていたので気にしてくれたのでした。少し元気がなかったのを察したのかもしれません。
「オンライン英会話はなかなか生徒が集まらず苦戦しています。」
素直にそう答えるしかありませんでした。フィリピン留学の事は全く考えていなかった頃です。
「そうか、特にアドバイスができるわけではないが少し創業時の話をさせてもらうよ」
マラグーティー社は創業90年のイタリアでは第二位の老舗メーカーです。イタリアで創業者が経営している唯一のバイクメーカーでもあります。
会長はトスカーナ州のワインが好きでブルネロ・モンタルチーノを飲みながら
「マラグーティーは私の父親が自転車屋として創業したんだ。もともと自転車のレーサーだった父が事故で足を痛めてレースに出られなくなってね。その後作ったメーカーなんだよ。オートバイの製造は私の代になって始めたビジネスなんだ。バイク製造の経験なんてないから周りのみんなが止めたんだよ。なんせ自転車屋がいきなりバイクの製造を始めようとしたんだからね。できない理由なんていくらでも挙げられたけど直感で感じたんだ。これからはバイクの時代になると。私はスクーター専門で新しい分野を切り開いてきた。できない理由を言わないで出来る方法を考えなさい」
ワインを私のグラスに注いだ後
「らいこうが春に突然オンライン英会話を始めると言った時はビックリしたけど友達として嬉しかったよ。新しいチャレンジだから苦労しているのだろうけど、自分の理想を信じて新しい方法を探しなさい」
東京でマラグーティー氏に頂いたワインを飲みながら思い出したのです。せっかくの高級ワインと生ハムを食べられ高い授業料を払わされた後でしたが、マラグーティー会長のワインが役に立ったのかもしれません。
一週間泊まって1億円
アッキーがまだ話しています。
「だいたい男二人がクリスマスに飲んでいるなんて間違っている。来年のクリスマスはフィリピン留学の学生とパーティーやろうぜ。絶対楽しいって」
感性で動くとはこういった事なのかもしれません。クリスマスパーティーは別にして、オンライン英会話フィリピン留学を組み合わせると本当に英語が伸ばせる学校ができると直感したのです。
「考えても無駄だ。新しい学校にチャレンジしてみよう」
ワールドGPでいつも優勝するイタリアのバイクはV型2気筒エンジンです。私の作る英会話学校もV―ツインで勝負することにしました。
2010年、年が明けからアッキーもセブに来きました。
当然、宿泊設備がないので事務所のソファーに寝ながら生活でした。
来る前、「泊まるところあるのか?」
「アルが事務所で泊まっているからなんとかなるんじゃないか?」
「シャワーはあるのか?」
「アルがいつもシャワー浴びるって言っていたよ」
「じゃあ何とかなるな、直ぐ行くよ」
そもそも前の韓国系英会話学校に一週間泊まって数億円売り上げた実力の持ち主です。事務所のソファーで一か月も滞在すればいくら売り上げるのか? などと楽観的に考えていました。
「らいこう、これはないぞ。シャワーがないじゃないか。アルは便所のモップ洗いのバケツで水浴びしている」
ミアが川の水を溜めて水浴びをしていたのを忘れていました。フィリピンではバケツで水浴びがシャワーだったのです。
「俺は便所のモップと一緒はいやだ」
と初めは言っていたのですがその後水シャワー(水バケツ)がつらいと言ったのは半年後にフィリピン留学の寮が完成するまでの間、風邪をひいた時の一回だけでした。パッカー強です。