第2章 フィリピン留学編
第23話 死ぬまで飲んで現実を知る
フィリピンが経験できる場所
私のいたセブ島の学校は食事も生活もすべて韓国式だったのです。
彼らは韓国からすべてを持ち込んでフィリピンの中に韓国を作っていたのです。そうでもしなければ貧しく、危険なイメージがあるフィリピン留学に学生の親が送り出さなかったのかもしれません。
親に無理やり来さされる学校にはしたくありません。自分のお金を使って自分で選んでフィリピン留学にくる生徒を増やしたかったのです。
「安いだけでなく本気で英語を伸ばしたい人がわざわざフィリピンを選んで留学する」という形にしたいのです。
私が作った学校の食事はフィリピン料理と日本食、中華料理、韓国料理があります。フィリピン料理をあえて残したのは、せっかくフィリピンに来ているのですからフィリピン料理を食べて貰いたいのです。文化を理解するのに食事が一番だからです。学食以外が食べたくなっても安心してください。セブ島にあるITパーク内には50件以上のレストランがあり世界中の料理が食べられるのです。実は是非そこで習った英語を使ってもらいたいと思っています。フィリピンではすべての店員が英語で仕事をしています。第二外国語なのでなまっているスタッフも多いですがタクシーの運転手もガードも掃除のスタッフまでも英語なのです。
そしてITパークで働いているフィリピン人にも話しかけて頂きたいと思ったのです。ITパーク内には欧米の一流企業が入っていてセブ島のクラスAの方が働いています。
学校の中だけでなく外でも英語を話す事により出会いがあり「縁」が生まれるのです。フィリピンに来た生徒が人生を変えるような「縁」に出会える事を期待しているのです。
くしくもオンライン英会話のある場所はフィリピン留学にも最適な場所だったのです。
「アッキーなんとかオンライン英会話の事務所を学校に改良しよう。ITパークでフィリピン留学をやっている奴はいないけど、オンライン用のブースを改造すれば何とかなるんじゃないか? 事務所の空きスペースを活用するんだ」
オフィスは400平米あるのですがオンライン英会話用のブースと広い先生の待機場所しか造作されていません。その時は会議室もラウンジすらなく、奥のデットスペースに使われていない大きな倉庫があるだけだったのです。
「生徒がくつろげる場所もいるぞ、ラウンジは結構スペースとるな」
「でもこの窓際眺めがいいしここにソファー置けば何とかなるんじゃないか?」
「食事はどうするんだよ」
「大丈夫だ、このビルに従業員用の食堂がある。それに簡単なカフェを作ろう。自前のレストランあるから配達させればいいんだ」
「洗濯は? ガードがいるだろう? 掃除はどうするんだよ」。
「寮も考えないとね。このビルはオフィスビルだから宿泊はさせられない」
「トイレの水浴びだと誰も留学にこない。ははは」
やってみると問題山積みでした。
初めて作った一対一のフィリピン留学用ブースは今でも笑い話です。2メートル四方の部屋を防音するために卵のパックを使いました。
「アル、隣の部屋に声が漏れないように何かアイディアはないかな?」
「防音室を作るの?」
「そうだよ。音が反射しないようになった凸凹した部屋を見たことある?」
「あ、らいこう。卵のパックはどうかな? 凸凹した部屋になるよ」
「良いね。やってみよう!」
フィリピンでは卵のパックは紙でできているので防音材の代わりになると思ったのです。お店で大量に分けてもらい天井や壁に張ったのですが大失敗でした。吸音効果以前の問題でアリと大量の虫が湧いて大騒ぎになってしまったのです。先生からはエッグルームと親しまれていたのですがフィリピン留学の生徒は誰も入ってくれませんでした。
解決策は飲んで忘れる
「フィリピン留学をやるのに何が必要なんだ。オンライン英会話ならわかるけど許認可とかはどうなっているんだろう?」
2010年の夏までにオープンさせたかったので、少し考えて
「前に韓国系の学校が売りに出ていると聞いたことがある」
「買うのか?」
「そうだよ。学校ごと買えばやり方がわからなくても直ぐに始められる。絶対一から作るより安くて簡単に違いない」
「苦労せずにノウハウが分かりそうじゃん。見に行こう」
「よし、明日さっそくアポだ」
見に行ってびっくりしました。狭いし、汚いし、町のはずれの古いビルを改装した学校でした。一階が受付になっているのですが竹でできたカウンターで字を書くこともできません。生徒が70人もいると言うのが信じられませんでした。
卓球台が置いてある脇の階段から2階のオフィスに通されたのです。
「うぁ~らいこう、ここのフィリピン留学を使うのは無理だよ。改装するにもこれではお金がかかりすぎる」
「大丈夫だ。元々校舎を使う予定はないよ。フィリピン留学のライセンスとノウハウだけ買えないかな?」
韓国人オーナーの英語はかなり酷くて会話が難しかったですが大丈夫、大丈夫の一点張りです。どうも宛になりません。
「とにかくもう少し親しくなって実情を聞くしかないな。アッキーどう思う?」
「韓国人と浸しくなれる鉄板ネタがあるけどやるか?」
「え? そんなものあるのか?」
「あるよ、最近歳を取ってきたから辛いけどな」
「歳を取ると辛い方法なのか?」
「そうだよ。ようはチュックテッカシマショウだ」
「なんだ、そりゃ?」
「飲んで、飲んで、死ぬまで飲むんだよ。韓国では倒れるまで飲むと親しくなれるんだ」
「本当かよ?」
「前の学校で効果は実証済みだよ」
「そうか、よっし腹据えて飲むか」
韓国人との飲むのはとてもしんどいです。とにかく強い。そしてビールにソジュをぶっこんでワンショットでぐいぐい飲んで行くんです。友達を作るのに毎回やるのかと思うと、韓国人に生まれなくて良かった。としみじみ思いました。
その時のフィリピン留学についての話題が忘れられません。
「設備が古いのにクレームはないのですか?」
「大丈夫だよ。クレームは簡単に対処できる」
「どうするんです?」
「うちはスパルタ方式だから外出を認めていない。文句を言って来た生徒を特別に外へ連れて行って一緒に飲むんだよ。大体喜んで忘れるね。そんなこんなで時間を稼いでいると滞在期間が過ぎて帰っていくから大丈夫なんだ。簡単だろう?」
だめだ、フィリピン留学の感覚が違い過ぎる。この学校は買えない。
詳しく調べてみたら買ったライセンスでは名義変更ができず、学校もオンライン英会話のあるITパークに移せなかったのです。