英語をマスターするためには3,000時間必要!? 時短するためのテクニックを学術的にご紹介!
どのくらい勉強すれば英語を習得することができるのか、誰しも一度は気になったことがあると思います。
漠然と英語を学習するよりも、具体的なデータに基づいて行動に移した方がなんとなく抱えている不安もなくなりますし、モチベーションも高まります。
そこで本記事では、第二言語習得研究の観点から英語をマスターするのに要する時間を推定し、また、その時間を時短するための効率的な学習テクニックをご紹介します!
- 仕事で英語が必要になったけど、どうしよう……
- 英語って毎日どれくらい勉強したらいいの?
- テストで高得点を取りたいけど、今の学習方法に不安がある……
このようなお悩みを抱えている方は、ぜひ一読してくださいませ!
1.第二言語習得研究とは
英語学習の方法を探るとき、どんなものを参考にしていますか?
個人の経験を記している一般サイトも魅力的ですが、できれば科学的に立正されたデータを元にして勉強を進めたいですよね?
そのような客観的な情報を提供してくれるのが「第二言語習得研究」と呼ばれる研究分野です。
第二言語習得研究(Second Language Acquisition)とは、母国語と異なる別の言語を習得する際に、脳のメカニズムや学習の成長曲線などを調べて『どのように学習を進めていけば良いか』を科学的に追求している学問です。
英語表記の頭文字をとって「SLA」、もしくは「L2習得研究」と表記されることが多く、英語は世界共通言語のため、日本では第二言語を英語に設定して研究が行われることが多いです。
つまり、第二言語習得論を参考にすれば、日本語を母語としている私たちが、どのような過程や方法で英語を学んでいくことができるのかについて知ることができ、全体像を見通しやすくなります。
効率的に英語を学習するヒントを得るために、第二言語習得論はピッタリなのです。
ただし、自分の環境と合致した論文を見つける必要があります。
例えば、日本人が英語を勉強するというトピック1つにおいても、論文の対象がアメリカ国内での英語学習なのか、日本国内での英語学習なのか異なることがあります。
また、観察対象が幼児なのか成人なのかも論文によってそれぞれ変わってきます。
2. 英語をマスターするのに必要な時間
第二言語習得研究において、英語を身につけるのに必要な学習量には諸説ありますが、平均すると2,500時間〜3,000時間だと言われています。そこで、高校卒業までの英語学習時間を下にまとめてみました。
校種 |
授業時間 |
小学校(3年生から6年生) |
158時間 |
中学校(3年間) |
350時間 |
高等学校(3年間) |
494時間 |
合計 9年間 |
合計 1,002時間 |
上の表を踏まえると、学校教育で英語を学習した時間は3000時間の約3分の1に当たります。
4年制大学に進めば1年生時の必修英語クラスが90時間あるため、“合計1,092時間”となります。そうであれば、あと約1,900時間で英語をマスターできる……と思いますよね!
しかし、安直にそう考えるのには注意が必要です。
これまでに平均週4時間の授業があったと仮定しても、私たちがすべての時間に集中できている訳ではありません。
学生時代であれば、思春期特有の不安や人間関係のもつれなどで、授業に身が入らなかった時もあるでしょう!
また、クラスの人数が多いと英語を発声する機会が少ない傾向にありますし、教員による雑談や準備時間を踏まえると、1コマを丸々英語の学習に当てているわけではないので、実質的な学習時間は減ってしまいます。
もちろん教員の質も大きく影響してくるため、一概に合計時間数にカウントできない可能性がおおいにあります。
高等学校は履修する授業によって時間の変動があるので、合計時間が大幅に減ることもあります。
そのように考えると、これから英語学習を始める方は、マスターするために少なくとも2,500時間以上を勉強しなければならないでしょう!もちろん個人のこれまでの経験値や目標によって必要時間は増減します。
そこで、まずはあなたの現在のレベルを調べるために、目標を設定することと、TOEIC(トーイック)や英検(実用英語技能検定)を受験しスコアを確認してみることをオススメします。
長期的な目標も大切ですが、身の丈にあった小さなゴールを定めて、少しずつ成長していきましょう。
2-1. 1日2時間の勉強が必要
1日2時間を勉強に当てると3年と半年、1日90分だと5年で英語をマスターすることができます。
もし、週2回の英会話スクールや塾に任せてしまうと、はるか遠い道のりになってしまいます。1コマ60分だとして単純計算で25年かかることに……。
もちろん専門家に教えてもらうことは貴重で有意義な時間だと言えますが、それだけで満足してしまわないようにしましょう!
また、ビジネスパーソンの方は、働きながら勉強するのは難しいですよね……。あまり無理をせずライフスタイルに合った勉強時間を確保するようにしましょう!
2-2. まずは習慣化を目指す
どんなに困難なことでも、習慣にしてしまえば勝ったも同然です。まずは時間を決めて毎日コツコツとやっていきましょう。
最初の頃は辛いと思いますが自分へご褒美をあげたり、達成した自分を想像したりしてモチベーションを高めると良いです。そのうちだんだんと慣れてきて、考えなくても勝手に体が動き出すようになります。
3. 英語勉強のオススメ時短テクニック!
2,500時間を超える勉強時間が必要だと言っても、ただ闇雲に英語に触れるだけでは非効率です。
逆に言えば、効率的で質の高い勉強を進めることができれば、マスターまでの2,500時間を短縮することが可能です。
そこで今回は、第二言語習得研究に精通している和泉伸一さんの著書『第二言語習得と母語習得から「言葉の学び」を考える(2016, アルク)』を参考に、「聴く・読む・書く・話す」の4技能に関する効率的な勉強方法をご紹介します。
3-1. リスニングスキル
多聴(extensive listening)
リスニングはすべての技能の基礎と呼ばれることがあります。つまりリーディング力、スピーキング力、ライティング力、リスニング力を向上させたい方は、リスニングのトレーニングを疎かにせず日頃から取り組んでいきましょう!
なぜなら赤ちゃんも、母語を習得するときに親や祖父母の声を聞き取りながら言語スキルを高めているからです。
それだけ耳から聞こえる情報は重要なのです。
リスニングは「突然聞こえるようになった!」とスキル向上の実感を得にくいスキルです。
そのため細かいことをあまり気にせず『なんとなく分かる気がする』『ちょっと面白いかも……』といった感覚で良いので、大まかにたくさんの英語を聴いてみましょう。
しかし、ただ耳に入ってくる音を聞き流すだけのヒアリングではなく、意識して理解しようとするリスニングを行うことが大切です。その際、具体的な方法として以下の2つのリスニング法をオススメします。
シャドーイング(Shadowing) |
音声を聴きながら、その後影となってついていくように同じ音を発音する練習法 |
ディクテーション(Dictation) |
音声を聴きながら、聞こえた英語をそのまま書き取っていく練習法 |
移動時間はシャドーイング、ご自宅ではディクテーションといった風に工夫して時間を確保することで日々のスキマ時間を有効活用できます。
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3-2. リーディングスキル
多読(extensive reading)
多読とは細かい部分をあまり気にせず、とにかくたくさんの英語を読むことです。
授業では精読を行っている学校が多いので、分からない単語に出会うとその都度意味を調べていたと思います。しかし、それでは推測力が身につきません。
多読では読んでいくなかで分からない部分があっても読み飛ばし、意味を推測しながら読み進めることが求められます。もちろん読み終わったあとはスクリプトを確認して意味をさらっと確認してください!
最初は簡単と感じるもの、面白いと感じるテキストから始めましょう。読むことにストレスを感じなくなってきたらレベルを上げると良いです。
音読(oral reading)
多読ばかりを続けていると正確な読みができなくなる可能性があります。そのため音読も取り入れましょう。英語特有の区切りや読みのリズムが理解できるようになり、黙読でも内容がスッと入ってきやすくなります。
音読専用のテキストを1つ買ってチャレンジするのがオススメです。
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英語学習法として音読は効果あり?正しいやり方を身につけて実践してみよう!
3-3 ライティングスキル
他者視点になって書く(Write like a reader)
ライティングは論理的思考力を養うのにもってこいの作業です。英語を書いているなかで、あやふやだった文法事項や英単語の綴りなどが明らかになり、より英語への理解が深まっていきます。
しかし、完璧を求めすぎないように気をつけましょう。正確さは後から自然に身についてくるものだと割り切り、まずは自分の感情や想いを書き出すことが大切です。
その際、大切にしていただきたいことが『他者視点』です。読み手の立場になって、分かりやすく読みやすい英文を書きましょう。誰かに読んでもらうのも効果的です。
読み手を意識することで、物事を客観的に考え、自然な英文がスラスラと書けるようになっていきます。
3-4.スピーキングスキル
インプットしたことをアウトプットする(Output what you input)
スピーキング力を高めるには実際に声に出すアウトプットが効果的です。
シャドーイングを通して英語特有のイントネーションやストレスを学んだあとは、身近なことを英語にする練習法が効果的です。
朝起きてからの気持ちやルーティンを英語にしてみたり、通勤中の風景を英語にしてみたりすることで、日常的なアウトプットにつなげていきます。
就寝前は、1日にあったことを振り返って感想や翌日への意気込みを言いましょう。そのうち、英語にすることが苦ではなくなってきます!
- (例) I wake up at 7:00. I feel sleepy. However, I have to wash my face.
- (例)Today, I studied math. It was difficult for me to calculate numbers.
4.マインドセットを行う
英語を勉強するうえで肝に銘じていただきたいことは、間違いを恐れないこと。
実は英語を第1言語としているアメリカ人やイギリス人も、コミュニケーションのなかで文法ミスを犯している場面は多々あります。そのため、必要以上に間違いを恐れることなく果敢に発声をしましょう。
最初は相手に笑われるくらいがちょうど良いかもしれません。
第二言語習得研究においても、英語をある程度理解したあとは一度、文法上の正確さは失われる傾向にあるという報告があります。
例えば、過去形を習った後に仮定法を習うと違和感を感じるはずですよね!
誤りを避けてしまうと成長を妨げることもしっかり覚えていてください。
5. おわりに
言語習得に適した時期は臨界期(生後8〜9歳くらいまで)と言われています。子どもがみな母国語を話せるのはこの時期のおかげなのです。
では、大人になって英語をマスターするのは不可能なのではないか、と思うかもしれません。
しかしそのようなことはありません!
大人は自ら考え、主体的に行動できるので子供よりも理解のスピードが早く、効率的に物事を進められます。
そのためご紹介したテクニックを駆使して、どんどん英語に慣れ親しんでいってください。皆様の英語ライフが充実したものになるよう、陰ながら応援しています!