英語構文【倒置】のパターンを徹底解説
英語の構文「倒置」とは、通常の語順とは異なる語順になることを指します。
特殊な構文である「倒置法」に苦手意識があるかもしれませんが、中学校で習う「疑問文」や「There is [are] ~.」は、「倒置」に分類される形です。
このように「倒置」は非常に重要な文法項目の一つです。
倒置はなぜ起こるのでしょうか?理由は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、「強調」によるものです。強調したい要素を文頭に置き、その後の主語と(助)動詞の語順を入れ替えることで、相手の注意を向けることができます。
2つ目は、「文法上のルール」によるものです。「疑問文」や「There is [are] ~.」「仮定法ifの省略」などは、文法ルールにより倒置が起こります。
3つ目は、「英文のバランス」によるものです。前の文とのつながりや、情報の新旧・長短、リズムなどの理由により倒置が起こります。
この記事では、いつ倒置が起こるのかをパターン別に解説します。英会話を楽しむ際にも英文を読む際にも重要な倒置表現をマスターしましょう。
【基本】否定表現を用いた倒置
「否定」を表す副詞を文頭に出すと、主語と動詞は疑問文の語順となり倒置が起こります。否定語を用いた倒置パターンを例文でご紹介しましょう。
「完全否定語」を用いた倒置
「not」「no」「never」などの否定語が文頭に置かれると倒置が起こります。
(人生でこんなに美しい映画を今まで見たことがありません)
例文は「never」が文頭に置かれ、その後の主語と動詞が疑問文の語順になっています。
「準否定語」を用いた倒置
完全否定よりも弱い否定を表す「準否定」の語が文頭に来た場合も、倒置が起こります。代表例が「めったに〜ない」を意味する「seldom」「rarely」や、「ほとんど〜ない」を意味する「hardly」「scarcely」です。
(最近私たちはめったに外食しません)
例文は「rarely」が文頭に置かれ、その後の主語と動詞が疑問文の語順になっています。動詞が一般動詞の場合は、疑問文を作る時と同じく、例文のように助動詞doが必要です。
「慣用表現」を用いた倒置
否定語を含む「慣用表現」も、否定語句を文頭に置くと倒置が起こります。慣用表現を使った倒置パターンをご紹介しましょう。
not only A but also B「AだけでなくBも」
Not only does she play (= She not only plays) the guitar, but she also sings beautifully.
(彼女はギターを弾くだけでなく美しく歌います)
no sooner ~ than「~するとすぐに」
No sooner had I (= I had no sooner) arrived at the hotel than it started to rain.
(私がホテルに着くとすぐに雨が降り始めました)
【基本】「So」を用いた倒置
相手の発言を受けて、「Sもまたそうだ」と表すときは「So+V+S」が用いられます。英会話では非常によく使われる倒置表現です。
ーSo do I.(私も好きです)
上記の返答例は、倒置させずに「I like them, too.」や「I also like them.」、またはよりカジュアルな言い回し「Me too.」と表現することもできます。
しかし「So」を文頭に置き「新情報」である「I」を文末に置くことで「私」の部分を強調させているのです。
倒置が起こらないケース
英語は「旧情報」を前へ、「新情報」を後ろに置く傾向があります。そのため、以下のような例文では、「So」が文頭にあっても倒置は起こりません。
ー So he does.(本当にそうですね)
返答例の代名詞「he」は、前文の「Paul」のことを指しており「新情報」ではないため、倒置は起こりません。前に述べられたことを強く肯定する場合に用いられる文です。
【基本】「Neither / Nor」を用いた倒置
相手の否定文を受けて、「Sもまたそうではない」と表すときは「Neither [Nor]+V+S」が用いられます。こちらも「So」を用いた倒置と同じく、英会話で非常によく使われる表現です。
ー Neither do I.(私も嫌いです)
上記の返答文は「Neither」が文頭に出て、主語と動詞が疑問文の語順になっています。
倒置させずに「I don’t like them, either.」「Me neither.」と表現することもできます。
【基本】仮定法「if」の省略による倒置
仮定法の「if」は省略することができます。この時、文法ルールにより「if」の直後の主語と(助)動詞は疑問文の語順になります。仮定法を用いた倒置パターンをご紹介しましょう。
「仮定法過去」の倒置
(もし私があなたなら、このバッグを買います)
「仮定法過去」は、過去形を用いて現在の事実とは異なる状況を仮定する表現です。通常は「If+S+Vの過去形〜」で始まる形ですが、例文は「if」を省略したことで疑問文の語順になっています。
「仮定法過去完了」の倒置
(もっと早く出発していたら、電車に間に合っていたでしょう)
「仮定法過去完了」は、過去完了形を用いて過去の事実とは異なる状況を仮定する表現です。通常は「If+S+had+動詞の過去分詞形」で始まる形です。
「仮定法未来」の倒置
(もし何か質問がありましたら、すぐにご連絡ください)
「仮定法未来」は、実現性の低い未来の状況を仮定する表現です。基本の形は「If+S+should+原形~,」で始まります。
例文のような「should」を使った倒置文は、ビジネス英文メールやTOEICにもよく出てくる表現です。
【発展】5文型の倒置
ここまでは主語と動詞が疑問文の語順になる倒置のパターンをご紹介しました。
ここからは、英語の主要素「主語(S)」「動詞(V)」「補語(C)」「目的語(O)」「修飾語(M)」の語順が入れ替わる倒置を文型別に解説します。
疑問文の形になる倒置とは違い、単純に語順が入れ替わるのが特徴です。5文型別の倒置パターンをご紹介しましょう。
第1文型の倒置:SV(M) → MVS、MSV(S=代名詞の時)
(ジェーンがやって来ます)
上記の例文は、第1文型「SVM(Jane comes here.)」の語順が「MVS」に入れ替わっています。「here」のように場所や方向の副詞(句)が文頭に置かれると、このような倒置が起こります。
ここで注意すべき点は、主語が代名詞の時は主語と動詞の語順は変化しないということです。
(彼女がやって来ます)
英会話で使われる「はいどうぞ」の意味の「Here you go.」「Here you are.」も、同様の理由で主語と動詞は通常の語順のままです。
第2文型の倒置:SVC → CVS、CSV(S=代名詞の時)
(天気が非常に悪かったので、私は家にいることにしました)
上記の例文は、第2文型「SVC(The weather was so bad ~)」の語順が「CVS」になっています。「so ~ that…構文」(非常に~なので…)の「so bad」の部分が文頭に置かれ、主語と述語の位置が入れ替わっています。
第3文型の倒置:SVO→OSV
(彼女は一度聞いたことは決して忘れません)
上記の例文は、第3文型「SVO(She never forgets what she has once heard.)」の語順が「OSV」になっています。例文では目的語に長い修飾語が付いているため倒置が起こっています。
第4文型の倒置:SVO1O2→O2SVO1
(私が彼にあげたのはデザートであって、荒地ではありません)
第4文型の「SVO1O2(I gave him a dessert, ~)」の語順が「O2SVO1」になっています。第4文型の倒置はあまり起こりませんが、例文のように強調したい「O2(直接目的語)」を前に持ってくることができます。
第5文型の倒置:SVOC→SVCO、OSVC
(詳細なプロジェクト計画と財務報告書を含むファイルが添付されているのをご確認ください)
上記の例文は第5文型「SVOC」の語順が「SVCO」になっています。修飾語を除いた文は「Please see the file attached.」(V=see、 O=the file、 C=attached)ですが、「the file」に長い修飾語が付いているため「OC」の語順が入れ替わっています。