英文法における【仮定法】とは? 仮定法の基礎から発展的な内容まで徹底解説
2021年から中学英語の学習範囲に加えられた「仮定法」。
しかし、仮定法には時制をずらすルールがあるため、理解しづらいと感じる方も少なくありません。
この記事では、仮定法の基礎から発展的な内容まで例文付きで解説します。
仮定法はTOEICや他の試験でも出題されやすい文法項目なので、この機会に使いこなせるようにしましょう。
仮定法とは?
英語の「仮定法」とは、現在や過去の事実を述べるのではなく、話し手の仮定・願望・意見を述べる場合に、動詞の形を変えて表現する文法構造のことです。
動詞の形は、たとえば「現在の事実」に反する仮定を述べる場合は「過去形」、「過去の事実」に反する仮定を述べる場合は「過去完了形」へ時制を1つ過去にずらします。
動詞の時制を1つ過去へずらすことで、実際の事実とは距離を置いた話をしていることを表しているのです。
仮定法と直接法の違い
「Ifから始まる文=仮定法」とは限りません。下の例文を比較してみてください。
直接法:
If she has time, she will help you.
(もし彼女に時間があれば、手伝ってくれるだろう)
仮定法(過去):
If she had time, she would help you.
(もし彼女に時間があったら、手伝ってくれるだろうに)
「直接法」とは、現実に起こり得ることを表す場合に用いる動詞の用法のことです。直接法の例文は、「時間があるかどうかは定かではないが、時間があれば手伝ってくれるだろう」と現実の話をしています。
一方で「仮定法」の例文は、「実際には時間がないが、もし仮に時間があるとしたなら、手伝ってくれるだろうに」と仮定の話をしています。仮定法の(助)動詞に「過去形(had,would)」が用いられているのが、直接法との大きな違いです。
このように、「仮定法」は時制をずらす必要があります。
仮定法過去
「仮定法過去」とは、「過去形」を用いて「現在の事実」に反する状況を仮定する表現のことです。
仮定法過去の作り方
仮定法過去の構文:
「If+主語+動詞の過去形~, 主語+would/should/could/might+動詞の原形~.」
(もし(今現在)~なら、~なのに/だろうに)
例文を紹介しましょう。
例文の「現在の事実」とは「(今は)時間がない」ということです。
しかし例文は「もし時間があるとしたなら」と仮定して述べられています。(助)動詞に「過去形」を用いることで、現実の事実から距離を置いた仮定の話であることを表しているのです。
【注意点】be動詞の場合は基本的に「were」
if節の動詞がbe動詞の場合は、主語の人称や単数/複数に関係なく「were」を用いるのが一般的です。ただし口語表現では、一人称・三人称単数に対して「was」を用いることもあります。
仮定法過去完了
「仮定法過去完了」とは、「過去完了形」を用いて「過去の事実」に反する状況を仮定する表現です。
「過去完了形」とは、「had+動詞の過去分詞形」の形を用いて、過去のある時点よりもさらに前の出来事や状態を表す形のことです。
仮定法過去完了の作り方
仮定法過去完了の構文:
「If+主語+had+動詞の過去分詞形~, 主語+would/should/could/might+have+動詞の過去分詞形~.」
(もし(あのとき)~だったら、~したのに/したでしょうに)
例文を紹介しましょう。
例文の「過去の事実」とは「早く出発しなかったので、間に合わなかった」ということです。
しかし例文は「もし(あのとき)早く出発していたのなら」と仮定して述べられています。(助)動詞に「過去完了形」を用いることで、過去の事実から距離を置いた仮定の話であることを表しています。
【発展】「仮定法過去完了+仮定法過去」
「仮定法過去」と組み合わせて、「もしあのとき〜だったら、今は…なのに」と表現することができます。
if節は「仮定法過去完了」で過去の仮定を表し、後の節では「仮定法過去」で現在の仮定を表しています。
仮定法未来
「仮定法未来」とは、未来のあり得ないと思っていることを、「もし万が一あるとしたら」という想定で仮定する表現です。
仮定法未来は「should」または「were to」で表します。
「should」
「should」を用いた構文:
If+主語+should+動詞の原形~, 主語+助動詞+動詞の原形~.
助動詞は「would/should/could/might」「will/shall/can/many」どちらも使用できます。違いは、過去形の方が仮定の度合いが強いということです。
この構文は、実現する可能性が少しはある場合に用いられます。例文を紹介しましょう。
例文の「雨が降ること」は未来に起こる可能性がわずかでもあるため、「were to」ではなく「should」を用いています。
「were to」
「were to」を用いた構文:
If+主語+were to+動詞の原形~, 主語+would/could/might+動詞の原形~.
この構文は、実現する可能性がほぼないか、全くない場合に用いられます。
例文の「時間を遡ること」は実現の可能性が全くないので、「should」ではなく「were to〜」を用いるのがポイントです。
仮定法現在
「仮定法現在」とは、話し手の願望や意見が込められた不確実な想像を表します。
仮定法現在の特徴は、「提案・要求」などを表す動詞や形容詞を用い、後のthat節内の動詞は「原形」を用いるということです。主語の種類によって動詞の形が変化することはありません。
仮定法現在の表し方には、主に下記2パターンがあります。
主語+特定の動詞+that+主語+動詞の原形~.
特定の動詞とは、suggest, propose, request, insist, requireなどの「提案・要求」を表す動詞を指します。
ポイントは、that節内の動詞に原形「go」が用いられていることです。
It+is+特定の形容詞+that+主語+動詞の原形~.
特定の形容詞とは、necessary, important, essential, advisable, compulsoryなどの「重要性・決断」を表す形容詞を指します。
ポイントは、that節内の動詞に原形「be」が用いられていることです。また、イギリス英語では「should+動詞の原形」を用いるのが一般的です。
【発展】仮定法を用いた慣用表現
ここからは英会話でも使う仮定法を用いた慣用表現を例文付きでご紹介します。
wish+仮定法
「wish+仮定法過去」は「(今)〜であればよいのに」の意味で、現在の事実と反対の願望を表します。
「wish+仮定法過去完了」は、「(あのとき)〜であればよかったのに」の意味で、過去の事実と反対の願望を表します。
if only+仮定法
「if only+仮定法」は「wish+仮定法」と同じく、現在または過去の事実と反対の願望を表しますが、「if only」のほうがより強い願望を表します。
「if only+仮定法過去」:~さえすればなあ
「if only+仮定法過去完了」:~さえしていたらなあ
as if [though]+仮定法
「as if [though]+仮定法過去」:まるで~であるかのように
「as if [though]+仮定法過去完了」:まるで~であったかのように
It is time+仮定法
「It is time+仮定法過去」:もう〜してもよい頃だ
この構文には注意点が1つあります。「仮定法過去」でbe動詞を用いる場合は「were」を用いるのが一般的でしたが、この構文では一人称・三人称単数は「was」を用いるのが一般的です。