時速270キロの暴風【超大型台風の衝撃】セブ島現地で起きた被害に関するご報告とお詫び
※現在(2022年2月10日)は、QQ Englishのオフィスのあるセブ島の復旧は進んでおり、電気や水道などのインフラも復活しております。 ※下記ブログは2021年12月27日に更新された記事です。
QQEnglish代表の藤岡頼光です。
先ず、QQEnglishをご利用して頂いている皆さんに、お詫びを申し上げなくてはいけません。
12月16日にセブ島を直撃したスーパー台風22号、オデットの被害で授業を予定通りに提供できなくなり、多大なるご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありませんでした。
【報告する内容】
1:QQEnglishの被害の状況
2:今後のスケジュール
3:受講できなかったクラスの保証
4:教師の状況
5:QAに来ている要望
6:台風直撃の夜(その時何が起きたのか)
台風22号フィリピン名オデット
スーパー台風オデットは中心気圧915ヘクトパスカル、最大瞬間風速75メートルの強さで2021年12月16日夜9時ごろセブ島に直撃しました。
日本で観測史上最大と言われる台風は2015年に熊本などで大きな被害をだした台風15号です。
15号の一番勢力が強いときに上陸したのが石垣島でした。その時の中心気圧が940ヘクトパスカル、最大瞬間風速71メートルだったので、今回のスーパー台風オデットは日本の過去最大の台風を超える規模だったと言えます。
日本ではありえないサイズに発達したスーパー台風は、建物やインフラへの被害だけでなく、400名を超える死者、行方不明者をだしました。
12月24日時点で被災世帯927,369世帯、被災者数3,599,109人と発表されています。
360万人と言うと横浜市に住むすべての人が被災した規模になります。
QQEnglishの状況
人的被害
教師1000名スタッフ200名は家族を含めて全員が無事でした。
設備の被害
ITパーク校
インターネット回線→2回線のうち1回線がつながり授業が可能(現在は2回線利用可能)
電気→セブ島全体では停電しているが自家発電機があり利用可能
水→セブ島全体では断水しているが、地下タンクに水の貯蔵設備があり利用可能
食事→ビル1階にあるグループ会社のレストランに備蓄があり提供可能
宿泊→急遽学校内に宿泊設備を作り100名を超える教師とスタッフ、そして被災した家族を受け入れ
無傷で授業提供ができる状態
先生とスタッフの宿泊先として利用可能
シーフロント校
インターネット回線→2回線とも切断(専用線を引いているが復旧の見込みが立たず)
電気→セブ島全体では停電しているが自家発電機があり利用可能
水→セブ島全体では断水しているが、地下タンクに水の貯蔵設備があり利用可能
食事→学校内のキッチンが利用可能。食材はITパーク校から提供されている
宿泊→ドミトリーの2割が被害を受けているが8割は利用可能
インターネット回線が切れているので授業ができない。
先生とスタッフの宿泊先として利用可能。
QQEnglishのレッスン提供数と今後の予定
《台風後のレッスン数》
16日→55%
17日→ 4%
18日→16%
19日→27%
20日→44%
21日→82%
22日→86%
23日→85%
24日→25%
25日→20%
26日→80%
台風直撃後の5日間はご迷惑をおかしましたが、21日以降は80%以上のレッスンをおこなえています。24日、25日のクリスマスはレッスン提供数が減りましたが、クリスマス以降も80%以上のレッスンが提供できるよう努力します。
また、31日、1日は祝日でレッスンが減りますが、1月の早い時期に通常のレッスン数に戻せる予定です。
教師の確保
ITパーク校
家を失って働けない教師が多く出ているのでITパーク校近辺に300名以上の規模で宿泊設備を準備しています。今週の後半から稼働予定です。
シーフロント校
現在400名の教師が滞在しているので、ITパーク校までシャトルバスで通勤を始めました。しかし、片道18キロの距離ですが、倒木がたくさんあったり、信号機が破損したりしていて交通渋滞が凄く、時間帯によっては片道2時間から3時間かかっています。
お願い
現在、台風前の8割までレッスン提供ができていますが、時間帯が上手く調整できていません。
理由はシーフロント校からの先生がシャトルバスを使う関係でシフトが理想的に組めないからです。
QQEnglishのピークタイムは夕方6時から10時頃までです。その間の予約が取りにくくなっています。
しかし、朝の10時から16時頃までのレッスンにはまだ余裕があります。難しい時間だとは思いますが、昼間に時間が作れる生徒さんがいらしたら利用して頂けないでしょうか。とても助かります。
キャンセルされたレッスンの保証
今回の台風の影響でキャンセルされたレッスンまたはポイントは全て返還されます。
ポイントプランと毎日プラン双方の生徒さんが、12月16日から1月の正常に戻るまでの期間の間、受けられなかった授業を1月末までにはまとめ、システムで計算しなおして、レッスンまたはポイントで返還する予定です。
今回の台風で生徒さんに損害が出ないように努めていきます。
詳しい保証内容はマイレッスンページから見ることができるので確認してください。
→https://www.qqeng.com/q/article/799
教師・スタッフの状況
QQEnglishの教師は全て正社員です。被災している教師も多いですが手厚く援助をすることができています。
社員だけでなく、その家族にも宿泊先、食事、水の提供をすることにしました。また、給料の前払いや、返済の必要ない義援金を支給して生活をバックアップしています。
被災して家をなくして困っている社員が多くいますが、継続的に雇用を続けていくことにより、少しずつ生活が改善すると考えています。
現在、生徒さんには十分な授業を提供できなくてご迷惑をおかけしてしますが、QQEnglishは全員正社員である利点を生かし、少しでも早く復活できるように全力で取り組んでいきます。
QAへのコメント
皆様から頂いたコメントを見ていると、先生への義援金を渡したいと言うたくさんの要望を頂いていますが、QQEnglishの先生以上に困っている人がセブ島にはたくさんいます。
今回は大変申し訳ありませんが、全て辞退させて頂くことにしました。
QQEnglishは皆さんが授業を継続して受けて頂ければ、問題なく先生を支えて経営していけるのでご安心ください。
教師のことを心配いただき、支援できないか・・などお問い合わせにお言葉をいただいています。本当にありがたいです。
社員については会社でも支援していきますので、温かいお気持ちはQQEnglish以外のセブ島の人にお願いできないでしょうか。セブ島の被害は甚大です。私も過去見たことがない被害がでています。
QQEnglishもできるだけのことをおこなっていますが、全然足りません。是非協力してください。
支援団体
いろいろな支援団体及び、ボランティア団体が活動していますが、実際に現地で活動している使い道がわかる団体をご紹介させて頂きます。
セブ日本人会
→セブ日本人会HP
→セブ日本人会Facebookページ
DAREDEMO HERO
→DAREDEMO HERO公式HP
→DAREDEMO HEROFacebookページ
セブンスピリット
→セブンスピリットHP
→セブンスピリットFacebookページ
台風直撃の夜
スーパー台風22号オデットは16日夜の9時にセブ島に上陸しました。
私は台風が直撃するとき海沿いのシーフロント校にいたので、その時の状況を報告させて頂きます。今までたくさんの台風を経験してきましたが桁違いに凄かったです。
嵐の前の静けさ
台風が上陸する当日、通いで来ているITパーク校のチームは台風の準備があるので、午後4時に授業を全て切り上げて帰宅しました。
私は全員の帰宅を確認した後、ITパーク校からシーフロント校に向かいました。住み込みで授業を行っているシーフロント校は夜通し授業を行う予定だったのです。
夕方5時にシーフロント校に着いた時は、まだ小雨で風も強くありませんでした。しかし、どんよりと暗くまさに嵐の前の静けさだったのです。
シーフロント校の台風に対する準備は万端でした。
いや、今思えばもっと、もっとやれることがあったのかもしれませんが、飛びそうなものは全て撤去され、動くものは全て固定されていました。
停電時に使う発電機の燃料も120リットル準備され、水もトラック3台分のタンクがいっぱいになっていました。お米は20袋、1袋50キロなので1トン準備され、飲み水も12リットル入るボトル50個、600リットルが作られていたのです。
私が着いてすぐに停電が始まり、発電機が動きだしましたが、すべては想定内です。誰一人慌てずに授業は続けられていました。
事態が急変
いきなり夜の7時半を過ぎたころ、状況が一変しました。地震でもないのにビルが大きく揺れ始めたのです。台風22号オデットが想定以上に発達して接近していました。
急遽、夜の8時で授業を取りやめる判断し、全員が1階のロビーに降りてきて避難を開始したのです。
雨よりも風が強く、まさにうねっていました。そして凄かったのは音です。ゴーゴーという音ではありません。地の底から湧き出るグォーグォーと言う唸り声が聞こえるといった感じです。
それが真っ暗な海から聞こえるのですから、何とも言えない恐ろしさでした。
音だけではありません。風の威力も凄まじいです。風速75メートルは時速に直すと270キロになります。新幹線が唸り声を発しながら、目の前を過ぎ去っていく状態がずっと続く感じでした。
崩壊が始まる
ピークは9時でした。屋上の屋根がとんでいたので、屋上に置いてあったものがドンドン落下してきます。また、8時半まで耐えていた海沿いのヴィラも9時に完全に崩壊しました。
そして、9時を少し過ぎた時、学校の裏側から大きな音がしました。なんとパンデミックの間、先生が寝泊まりをしていたプレハブ住宅が崩壊したのです。
8階建てのシーフロント校の裏に立っていたので大丈夫だと思っていたのですが、どこにあっても台風の暴風は容赦しませんでした。
被害があまりに大きく、台風が直撃した夜は先生と一緒に一睡もできませんでした。今までで一番長く感じた夜だったのです。
忘れられない夜明け
一夜明けた翌日のことは忘れられません。
シーフロント校から見ると、太陽は正面の海から昇ります。
待ちに待った夜明けです。だんだんと明るくなるにつれて台風の被害状況が見えてきました。
想像はしていましたが言葉にならない惨状です。まるで爆弾が落ちた後のようでした。
シーフロント校はヴィラやプレハブ校舎が全壊しただけでなく、1階、2階にあったテラスが無くなり、シンボルだったヤシの木も途中から折れていたのです。全く違った光景になっていました。
そして学校の庭やプールにヤシの木だけでなく、たくさんのマットレスや家具が散乱しています。セブ島留学で使う生徒さん用のマットレスを8階の屋上倉庫にしまってあったのですが、倉庫が飛ばされ、1階に振ってきたのです。
なんとマットレスだけでも240枚も落ちています。その他、屋根破片や折れた柱やらで、足の踏む場もありませんでした。
何かを言わなくてはいけない
先生たちがドンドン広場に降りてきました。台風の夜を一緒に過ごした教師500名と、スタッフ100名の600名がシーフロント校にいます。
みんな不安そうな顔をしています。何か話さないわけにいきません。
人生で一番しんどいスピーチでした。
1:今、シーフロント校は壊滅的な被害を受けたが必ず復活できる。
2:QQEnglishには世界中に生徒さんがいて勉強を続けてくれている。
3:日本、中国、台湾、韓国、ロシア、タイ、イラン、ブラジルに仲間がいる。
4:今のシーフロント校は外部から孤立しているが一人ではない。
5:QQEnglishが一番大切にしているのは人だ。建物は失ったが全員が無事。
6:力を合わせて頑張ろう。
まったく上手に話すことはできませんでしたが、みんなの士気はとても高かったです。全員が無事だったからかもしれません。
私たちが誇れること
QQEnglishにはいろいろ自慢がありました。日本人がフィリピンに初めて作った本格的な英会話学校で、セブ島留学とオンライン英会話を併せ持つフィリピン最大の英会話学校です。
海沿いのキャンパスを持っているのも私たちだけですし、最新鋭のITパーク校もあります。
しかし、パンデミックでセブ島留学を失い、台風でシーフロント校に壊滅的なダメージを受けてわかりました。
設備やシステムなどは何の自慢にもなりません。重要なのは生徒さんであり、教師であり、スタッフ、ようするに人だったのです。
生徒さんの温かい心に感謝
台風の被害を受けてから5日間はITパーク校だけだったので、半分以下の授業しかできませんでした。それでも解約をする生徒さんが殆どいなかったのです。
QQEnglishには、たくさんの生徒さんが世界中にいます。これ以上心強い援軍はありません。
全てお断りしましたが、今回の台風被害でたくさんの義援金の申し出もありました。私達には温かい心を持った素敵な生徒さんがたくさんいます。
社内情報なのであまり外部に言いたくありませんが、QQEnglishの生徒さんの学習継続期間は業界の倍以上なのです。
今はご迷惑をおかけしていますが、もう少しお時間をください。生徒さんが授業を続けてさえくだされば、私たちは復活できます。
全員が正社員
QQEnglishは教師やスタッフだけでなく、メンテナンスや掃除やキッチンのチームも全員が正社員で働いています。一緒に働いているので、何かあるとみんなが同時に被災してしまうのです。
普通のオンライン英会話のように先生がフィリピン中にいて、ネットでつながって仕事をしていれば、このような困難にはならなかったでしょう。セブが被災しても、それ以外の地域の講師が授業をすれば良いだけだからです。
私たちのやりかたはお世辞にもリスクに強いとは言えません。しかし、辛いことも楽しいことも一緒に経験してきた仲間がいるということは力になります。
倒れても、倒れても、支えあって立ち上がることができるからです。人間は困難から立ち直るときに成長します。私たちはいつの間にか、とても強いチームになっていました。
台風後、初めて行ったミーティングで先生たちが一番心配したのは、今日の寝る場所でも食事でもありませんでした。なんと授業ができないことだったのです。
シーフロント校にいるチームの合言葉は、早く復活して早く授業を行うだったのです。
大げさに聞こえるかもしれませんが、是非、QQEnglishの先生に聞いてください。シーフロント校の先生だけでなく全ての先生がそう答えると思います。
完全に孤立した
台風が過ぎ去った後、すぐに学校から外に出られませんでした。プレハブ住宅が崩壊して出口を塞いでいたのです。通路を確保するのに小一時間かりました。
そして、外に出て愕然としました。ネット回線どころかあらゆる携帯電話が通じなかったのです。
セブ島には主に4社の携帯電会社がありますが、通話もSNSもできません。もちろん電線が切れているので、普通の電話も不通です。外との連絡が全く取れなかったのです。
今のシーフロント校の状況を、東京をはじめ海外のオフィスに伝えなくてはなりません。そして市内のITパーク校に援助を要請しなくてはならないのです。
この時の気持ちは未だに上手く表現できません。
600人分の飲み水が無い!
災害になって分かったのですが、水と食料と電気で一番重要なのは水です。水がないと生きていけないからです。
シーフロント校にある備蓄は600リットルです。しかし、全く新しい水が手に入らないと1日で無くなってしまいます。今日中に手配しないと翌日から飲み水が無くなってしまうのです。
まさに、600人を抱えて生命の危機でした。飲み水が無くなる恐怖ははかり知れません。
なんとしても、ITパーク校に連絡をして持って来なくてはなりませんでした。
しかし、ネットどころか電話がない世界に逆戻りしていたのです。
ようするに1876年にグラハム・ベルが電話を発明する以前の時代です。メッセンジャーを走らせるしかありませんでした。
車は使えないので、学校にあったバイクで市内にあるITパーク校に連絡するのです。もちろんITパーク校が無傷かどうかその時は分かりません。
しかし、その選択しかありませんでした。
長い長い一日が始まりました。メッセージを託したスタッフが無事に到着して水を運んでくることを祈るしかないのです。道もちゃんと通じているかわかりません。それでも待つしかなかったのです。
食料をもって帰ってきた
午後3時を回ったころでした。バイクがITパーク校のキッチンチームのマネージャーを載せて帰ってきたのです。
QQEnglishは何でも女性が多いので、キッチンチームのマネージャーも女性です。なんとマネージャー自身がバイクの後ろに乗って帰ってきました。
話を聞いて見ると近くまで車で来ている。しかし、電信柱が倒れていて車ではシーフロント校まで来られない。逆側から近くまで取りに来てほしいということでした。
幸い私の車は悪路を走る4WDだったので、被災した道路も走ることができます。とりあえず載せられるだけの男性スタッフを連れてバイクの後を追いました。
電信柱3本がバランス悪く倒れて、どうしても車が通ることができない場所があったのです。200mぐらいが遮断されていました。
ITパーク校から来た車の反対側に車を止めて、歩いて荷物を移し替えすることにしたのです。
合流してびっくりしました。なんと、飲料水の他に食料も大量に積んでいたのです。私の車3往復分です。600人が数回食べる量があります。嬉しくて涙が出ました。
ITパーク校にはグループのレストランがあります。パンデミックでセブ島留学が閉まるまでは留学生向けの料理をつくっていました。
今はローカル向けのレストランにして2年間生き残っていたのです。今回そのお店を閉めて、在庫としてある全ての食材を積んで持ってきてくれました。
シーフロント校は自家発電機と業務用の浄水器があるので、井戸水を手に入れることができれば自分で飲料水が作れます。
数日生き残れれば、近くの井戸から水を運べるようになり、軌道に乗せることができるのです。
シーフロント校が生き残れることが決定しました。
新しい命
そして、私たちがさらにしっかりと働かなくてはいけない理由が新たにできました。
なんとスーパー台風22号オデットが過ぎ去った翌日、シーフロント校の廊下のテーブルの下で新しい命が生まれたのです。
パンデミックの間一緒に生活をしていた犬が赤ちゃんを産んでいました。7匹もいます。
新しい命を見るとやる気と元気がでるのですね。シーフロント校に嬉しい住人が増えました。
必ず復活します
未だにネットは通じず、電話も通じず、毎日メッセージを手紙でやり取りしています。
しかし、私たちはシャトルバスを使ってITパーク校で授業を再開することができました。今は皆さんにご迷惑をおかけしていますが、もう少しお待ちください。
今まで経験したことがない大きな台風で被災しましたが、全員が元気で士気が高いです。QQEnglishは必ず復活します。
そして、いつか留学が戻ったら先生だけでなく子犬にも会いにきてください。
QQEnglish代表
藤岡頼光