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義務教育学習では生きた英語は身につかない? | 新!保護者の知恵袋 #8

義務教育学習では生きた英語は身につかない? | 新!保護者の知恵袋 #8
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保護者の知恵袋

保護者の悩み(男の子 9歳)

正直なところ、学校の先生(日本人)の英語の発音や、取り上げる例文の不自然さなどが気になっています。
先生を責めるわけでは無いのですが、学校教育がなかなか英語学習に追いついていないという印象です。

現在、子供は英会話教室で週に2回アメリカ人の先生に教わっており、生きた英語を学ぶとはこういう事なんだなと感じています。
やはり義務教育の範囲での英語の勉強で、生きた英語は身につかないのでしょうか?

2020年度から公立小学校の3年生以上からは英語の授業が始まることになりました。

ご存じの通り、現在の小学校は多くが「学級担任制」を採用しています。

これはひとりの教員(担任)が、受け持ちのクラスのほとんどの教科を指導する制度です。

ご質問への回答は「現在の公立小学校でも生きた英語を学ぶことは可能」になります。

ただしそれは「ひとりの教員の英語力」に委ねられるものではありません。

この記事では、「義務教育範囲で英語を身につけるための方法」について解説いたします。

義務教育範囲で英語を身につけるための方法

義務教育内で「質のいい英語」の授業を受けるには条件があります。

まずは現在の公立小学校の仕組みと問題点を見てみましょう。

公立小学校における英語教育

公立小学校の授業は文部科学省が定める「学習指導要領」に沿ってカリキュラムが組まれます。

英語の学習に関しては、それぞれ小学校3-4年生は「外国語活動」として、5-6年生は「教科」として授業を行うこととされています。

現在のほとんどの公立小学校で「学級担任制」が採用されており、この制度ではクラスの担任は義務教育範囲内の教科のほとんどをひとりで教えなければいけません。

そのため、教員の負担が非常に大きく、そこに加えて教員個人に「誰もが納得するほどの英語力」を習得してもらうのは現実的なアイディアではないでしょう。

これまでの状態のままでは、ご質問者さまが懸念する通り、学校で「生きた英語」学ぶのは難しいことです。

公立小学校の英語教育に関する問題点

  • 教員の英語力が乏しい
  • 児童が英語に触れる時間が少ない

教員の英語力が乏しい

小学校教員270人に対して行われた「学校授業に関する調査」の中で、回答者の65%が「英語の指導に自信がない」と答えたそうです。

しかし考えてみれば、それは無理もないことではないでしょうか。

彼らにとって英語は「多くある教科のうちのひとつ」に過ぎず、生まれてから一度も海外への渡航経験がない教員もいるのですから。
おそらく、一般的な小学校教員の英語力は「乏しい」のではなく「平均的日本人と同等」なのではないでしょうか。

英語に触れる時間が少ない

以下は学習指導要領によって定められた英語の指導内容です。
(※授業はひとコマ45分。)

小学3・4年生小学5・6年生
目的外国語活動(成績に反映されない)教科(成績に反映される)
学習目標「聞く・話す」を通じて、言語に慣れ親しむ。日本語と英語の違いに気付き、知識として定着。英語のコミュニケーションに活用できる基礎的な技術の定着。
授業内容自分の考えや思いを伝えるといった言語活動がメイン。「聞く・読む・話す・書く」の体系的な中学以降につながる授業。
授業時間週1コマ程度、年間35時間相当。週2コマ程度、年間70時間相当。

一般的に、日本人が英語を実用レベルまで話せるようになるには、最低でも3,000〜5,000時間が必要と言われます。

中学校と高校の6年間の勉強時間は約1,500時間ですが、2020年からは小学校3年生以上の4年間、210時間が加算されることになりますね。

それでも高校卒業までに3,000時間には満たないのが現状です。

ちなみに、一日一時間の英語の勉強を365日×4年続けると約1,460時間なので、小学校5年生から大学卒業まで英語の勉強を継続すれば3,000時間は達成できる見込みとなります。

この問題点を踏まえたうえで、どのような解決策があるのでしょうか。

現状の小学生の英語力向上で期待されるものに以下の2つが挙げられます。

  1. 教科担任制の導入
  2. ALT・JTEの積極活用

それぞれ解説します。

教科担任制の導入

2022年4月から小学校高学年で教科担任制が導入されることになりました。
現在でも中学校からは教科担任制が採用されていますね。

この制度の利点は、各教科を「専門的に学んだ教員」が指導できるようになることです。

通常の担任制では、英語は多くの教科のうちのひとつにすぎないため、英語の発音や文法の知識が一般教養程度しかない教員も授業を行わなければいけません。

これは教員と児童、どちらも負担に感じることではないでしょうか。

ですが、英語の専門教員であれば、留学経験者やJ-SHINEをはじめとする英語の試験資格保持者など、一定のレベル以上の英語力を備えた教員が子どもたちを指導してくれるようになるのです。

ALT・JTEの積極参画

ALT(Assistant Language Teacher)とは「外国語指導助手」のことで、ALTは英語のネイティブスピーカーや準ネイティブスピーカー等が「英語の先生」として各学校に派遣され英語の授業に参画しています。

文部科学省の「英語教育実地状況調査」によると、平成4年度のALTの参画人数は12,417人で、ほぼすべての小学校をカバーしています。

ALT参画の最も大きな利点は「本物の発音と日常的に使用されている英語」をネイティブから直接学ぶことができることです。

課題点としては、ひとりのALTが複数の学校を訪問するのが通常であるため、すべての小学校のすべての英語の授業にALTが必ず参加するわけではないということです。
自治体によっては、学校の英語の授業で月に1度、またはそれ以下しかALTに会わない、ということも考えられます。
また、ALTになるため日本語能力は問われないため、児童が日本語で質問をしても的確な返答ができない可能性もあります。

ALTの課題のひとつである「授業への参画」に関しては、文部科学省から以下のような資料が出ています。

ご覧の通り、以下は「ALTが授業に参画する割合」ですが、上位を占めるのは「75-100%(10回中10回参加から7.5回参加)が『5-6年生で約40%、3-4年生では約50%』」です。
その他、半数以上の小学校で7割から3割程度の授業でしかALTの英語に触れられない(=ネイティブの英語に触れられない)ということになります。

調査対象学校数:18,702校
0%1-24%25-49%50-74%75-100%
ALTが授業に参画する割合3・4年生6321,8343,0063,2679,959
5・6年生3622,0143,2075,6477,470

参考|文部科学省「令和4年度公立小学校における英語教育実施状況調査」

JTEの参画を促す

ALTと似た立場でJTEというものがあります。

JTEとは”Japanese Teacher of English”の略で「日本人英語指導助手」のことをいいます。
ALTは聞いたことがあっても、JTEは知らなかったという方も多いのではないでしょうか。

JTEのおおまかなイメージは「教員免許は持っていないが、英語を専門的に学んだ人材」です。

通常はクラス担任とALTに加えた「チームティーチング」で授業に参加します。

JTEの良さは何と言っても「高い英語力」と「日本語が通じる」ところです。
子どもたちの英語に関する質問や疑問、学習方法などを細かく指導をすることができます。

こちらはALTとは違って、自治体または学校との直接契約による採用がほとんどです。

課題点としては、認知度・普及率の低さです。

ALTJTE
条件一人で授業を担当することはない。あくまで担任の補佐として参加する。
メリット発音や文法が完璧である。子どもの異文化理解と、多様性を教えられる。生徒の分からない点に「日本語」で寄り添える。専門知識があるため、指導が的確である。
デメリットALTひとりが複数の学校を訪問するため、すべての小学校のすべての授業にまんべんなく出席できるわけではない。公立小学校にJTEを積極的に採用するほどの予算がない。
採用方法各自治体がJETプログラムなどを通して行う。自治体の求人による直接契約、等自治体の求人による直接契約。学校単位での契約。

子どもに生きた英語を学んでもらうためにできること

2022年から始まった、小学校高学年における教科担任制は一斉に導入されるわけではなく、今後4年間で徐々に専門教員を増やしていく計画だそうです。

ですので、お子さまの小学校でいつ教科担任が導入されるか分かりません。

質問者さまもご承知の通り、現在の担任に「英語力の向上」を求めるのは無理があります。
ましてや、全国の小学校教員に英語のスキルを磨いてもらうよう要求することもできませんよね。

となると、もっともよい方法は、ALT又はJTEが子どもの授業に積極的に関わってくれることではないでしょうか。

これは、保護者さまが、学校や教育委員会、または行政に対して「ALTやJTEの増員を希望していること」を、個人または賛同者を集めた保護者会として伝えてみてはいかがでしょうか。

グローバル化が進む中、学校も生徒に英語力が必要なことは承知しているはずです。
保護者がその必要性をアピールし続けることで、今年すぐは無理でも、翌年の学校予算を編成する際に考慮してもらえる可能性もあるのでしょうか。

そしてALTやJTEの英語の授業や学校行事への参加が増えれば、子どもが活きた英語を聞く機会もおのずと増え、さらなる英語勉強のモチベーションにつながるかもしれませんね。

英語力の向上に役立つツール

小学校での指導では不安がある場合は、外部から英語を取り入れるのもひとつの手です。

英語学習アプリを使う英語学習アプリの音声はネイティブスピーカーが担当していることがほとんどのため、きれいな発音で英語を学ぶことができます。
塾やオンライン英会話に通う塾では語彙や文法などの知識、オンライン英会話では英語話者との「会話力」を学ぶことができます。
英語のイベントに参加する「英語を学ぶ」のではなく「英語で話す」のが主となる、家族参加型の英語関係のイベントに積極的に参加して子どものモチベーションを刺激する。

まとめ

現在の公立小学校の英語の授業は改善点が多くあるようにも思えますが、公立小学校の教育は、すべての子どもたちに一定レベルの基礎学力を保障するものです。

英語力に長けたお子さまをお持ちの場合は、より高い知識を与えたいと願うのも当然のことです。

能力の高い児童には、外部環境からプラスアルファの知識を補うことでさらに良い点を伸ばしていくという方法もあります。

そして、英語の授業数やALT制度の活用頻度を増やすなど、保護者さまが学校や行政に働きかけることで、義務教育範囲内であってもより質の高い英語を享受することが可能になるかもしれません。

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