コロナ禍で小学校の英語教育が受ける影響と保護者ができること
- カテゴリー
- 英語コラム
2020年4月より、小学校での英語教育が必修化され、子供の英語教育に対する関心と期待は一気に高まりました。
しかし残念なことに、同年より始まったコロナ禍は小学校の英語教育にも影響を及ぼしています。この記事では、英語教育にどのような影響を与えたのか、そしてコロナ禍においてどういった点を意識すればいいのかについて考えてみたいと思います。
コロナ禍は小学校の英語教育にどのような影響を与えたのか
新学習指導要綱では、小学3年生と4年生については「外国語活動」として、小学5年生と6年生については「外国語」という新たな教科として、それぞれ英語を学んでいくこととなります。
しかし、ご存知のようにコロナウイルスの感染拡大に伴って2020年の3月初めに全国一律の休校要請がなされたことにより、英語はもとより学校活動そのものが停止せざるを得ない状況となりました。
その後2021年に入って間もなく、一斉休校の要請はないものの複数の都道府県において再度の緊急事態宣言が発令された他、緊急事態宣言の対象外となる地域であっても、児童を含む学校関係者が感染したことによる学校閉鎖が相次ぐなど、教育現場は未だ混乱の真っただ中にいる状態です。
このような学校教育の危機ともいえる状態に陥ってしまった2020年春以降、大きな期待と共に始まった新学習指導要綱の下での英語教育も出鼻をくじかれる形となってしまいました。では具体的に、このコロナ禍によって小学校の英語教育にはどのような影響があったのでしょうか。
休校措置による授業時間の不足
まず、休校期間が長期に及んだことによる影響として授業時間の不足が問題となりました。授業時間が確保できなかったことにより想定されていた授業の進め方ができなくなり、当初予定されていたカリキュラムを消化するのが難しくなってしまったのです。
学校によっては、学習の各ユニットの内容を複数個分併せて消化できるようにするなど柔軟に対応していくことで、この授業時間不足の問題を解消しようという試みもなされているようです。
しかし、今回のような長期間の休校措置は過去に例を見ないものであり、この遅れを取り戻し再び安定した学習のペースを作るのは容易なことではありません。
教師の準備不足
コロナウイルスの流行が問題となる前から、学校によってあるいは教師によって提供する英語教育の質に差が出てしまうことが懸念されていました。
特に中学年の指導は担任が行なうことが原則とされていますから、たとえ指導力以前に英語力が不足している教師だとしても授業を進めていかざるを得ないためです。
実際、2020年の英語教育必修化が決まった後、多くの教師から「英語の指導に自信がない」、「本音を言うと、英語の授業をしたくない」といった英語指導に対して消極的な声が上がっていました。
このように、コロナ禍以前から不安要素が多々あったことは否めず、質の高い英語教育が提供できるかどうかは、教師によって、あるいは学校によって差が大きいというのが現実でした。
しかし、コロナの問題が生じたことにより、本来ならば指導力や授業内容に問題がなかったはずが、今回のコロナ禍に伴って感染防止対策などに時間を割かなくてはならず教師の負担が増え、それによって英語の授業の準備にまで手が回らなくなっている学校も少なくないようです。
また、教師自身英語の学習経験が少ない場合、語学学習の本質的な部分を肌感覚として理解しづらいことも、コロナ禍における英語指導にマイナスの影響を与えてしまうことが懸念されます。
語学学習の核となるものはなにかが把握し切れていない場合、感染リスクを軽減するためとして工夫したアクティビティーの手法が、語学の学び方として見た場合には不適当な方法となってしまう危険性を孕んでしまうためです。
大きな声を出せないことによるアクティビティーへの影響
感染防止策として、おしゃべりをひかえることが推奨されたことで、給食の時間でさえ会話を控えることを余儀なくされています。当然、授業中に大きな声を出すような場面も減らすことを求められています。
大きな声を出す活動といえば音楽の時間での合唱がすぐに思い浮かびますが、それだけではありません。本格的に始まった英語教育にもこの影響は及んでいます。
飛沫防止のアクリル板を挟んでの対話練習や、フェイスシールドやマスクを着用してのアクティビティー等、感染防止と授業の質の確保、その両立に頭を悩ませています。
中には、対面した状態では感染リスクが高いとの理由から、苦肉の策として背中合わせでの発音練習をしているという学校もありました。
コロナ禍での英語教育、保護者ができることは
小学校の英語指導自体が手探りの状態であることに加えて、コロナ禍の影響下での英語指導も手探りの状態です。各学校はアイデアを絞り出し工夫することで乗り切ろうとしており、そうした先生方の努力には頭が下がります。
しかし、外国語学習としての質を考えたときに、今のような制約の多い授業では不安要素が残ることも事実です。
多くの子供たちにとって、本格的に英語に接するのはこれが初めてのことでしょう。語学学習において発話、つまりアウトプットは最も重要な要素の一つです。
子供の場合、英語で話したことが通じた、英語で表現することができたという成功体験を得る意味でもなおさら声に出すことは重要です。
そもそも、この新学習指導要綱の下で初めて英語を学ぶことになる小学3・4年生については、特にリスニングやスピーキングの領域すなわち読み書きよりも、聞いて話すことに焦点を当てたものになっています。
未知の感染症の流行という前代未聞の状況下において、感染が広がらないようにするための苦肉の策とはいえ、声を出さない語学学習はやはり学習の形としては不自然であり、また、効果も得にくいと言わざるを得ません。
やはり、そうした足りない部分は家庭での学習で補うのが最善策です。
では、家庭では何をすべきで何を意識すべきなのでしょうか。それは2つの「環境」を整えてあげることです。
外国語学習に適した学習環境を整える
一つは、語学学習として適切な学習環境を整えることです。
学校での英語学習が手探りの状態であること、また緊急事態宣言の再発令や感染者の発生や増加による休校など不安定な状況下では、学校の授業の遅れをカバーするための補助的な位置づけとしてではなく、その代替的な存在としての学習環境を確保することも考える段階にきているのかもしれません。
そして、この学習環境とは、きちんと語学学習の体をなすもの、言い換えれば語学を学ぶ上で重要な要素をカバーしてくれるものであることが必須です。
一例を挙げると、英語にしかない音に触れることができること、アウトプットがしっかりできること、双方向のコミュニケーションができること等です。
これらは、現在学校では十分な機会を得られないものですし、コロナの影響を抜きにしてもまだまだ学校の現場では十分な質を確保できていないものですから、家庭での学習手段を選ぶ際にこれらをカバーするものを選ぶことは、大切なポイントです。
小学生を対象にした英語の教材はたくさんありますが、これらの条件をカバーしてくれるものとしては、現時点においてオンライン英会話が最良の選択といえるでしょう。
オンライン英会話であれば、通常の英会話スクールのように通う必要がありませんから、感染リスクを減らす意味でも最適な学習形態であるといえます。
英語を好きになれるような環境を整える
もう一つは、英語を好きになれるような環境を整えてあげることです。
これは、上でお話しした学習のための環境を整える話とは少し違います。日常的に外国文化に触れる機会を設けることで、英語を身につけて使えるようになりたいという気持ちが自然に生じるようにしてあげることが大切です。
学習の遅れへの心配から、ドリルのようなものを購入して自主学習させようかと考えている保護者の方も多いはずです。
しかし、小学校のうちは単語を正しく覚えさせるよりも、外国文化に触れさせて英語への関心を高めてあげることの方がこの年齢でははるかに重要です。
さいごに
コロナウイルスの問題を抜きに考えても、小学校の英語教育自体未完成の状態です。
それに加えて、未知のウイルスによるパンデミックという未曽有の状況で、質の高い英語学習の機会を設ける難しさは想像に難くありません。
さいわいなことに、オンライン英会話の普及により、ただ英語に触れるというだけではなく、アウトプットする機会、相手と生のコミュニケーションを図る機会などは劇的に増えています。カリキュラム等も利用者のニーズに応じて多様化しています。
世界的なパンデミックにより海外は以前よりも遠くに感じるかもしれません。
しかし、今回の出来事により英語を学ぶ意味が薄れたわけではありません。親御さんはぜひ学びの環境を整えると共に、英語を好きになれる環境を整えてあげてください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さびねこ
【自己紹介】
英検1級取得後、英語講師を経て、フリーランスで翻訳・ライティング業務を行う。
【英語力・指導経験】
都内の大学(法学部法律学科)大学在学中に英検1級に独学で合格。その後、英会話スクールにて、幼児クラスから、小学生向けクラス、そして、高校生・社会人クラスと一通り担当。独学で英語をマスターし他経験、指導経験から、学習者としての視点と指導者としての視点双方から発信しています。
【資格およびスキル等】
・英検1級・法律英語
・スペイン語、イタリア語、インドネシア語会話(まだ初級~中級レベル)