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【英語4技能】正しい文法で英語を使えるようになるにはどれを強化すべき?

【英語4技能】正しい文法で英語を使えるようになるにはどれを強化すべき?
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英語コラム

英文法の力を伸ばすために必要な練習とは何でしょうか?

日本では高校英語で文法学習に多くの時間を割きます。

文法問題をたくさん解いたり、難解な文を読んで構文把握の練習をしたり、受験英語で徹底的に文法をインプットするので、「英語は話せないけど文法ならよく理解している」と言う日本人が多くいるほどです。

しかし、残念なことに、たくさん勉強したはずの文法力や読解力もそれほど高くないということがわかっています。

日本人は文法が得意か?


TOEFL ITPというテストを、千葉大学では全学部1年生に実施しています。

このテストには日本人が苦手意識を持つスピーキングは含まれていません。
にもかかわらず、2016年度の平均スコアは461点で、これはCEFRのB1(460-542)にかろうじて達している値です。

そして、正規留学が可能になるB2以上に到達している学生はわずか3.1%しかいませんでした。

CEFRでは英語力を6段階に分けていて、A1, A2, B1, B2, C1, C2としています。
Aは初級、Bは中級、Cは上級で、それぞれのなかで上下に分けています。
つまりA2は「初級の上」、B1は「中級の下」です。

この境界あたりに日本の大学生の多くが位置していることになります。

また、TOEFL ITPは3部構成になっており、Iがリスニング、IIが文法、IIIが読解ですが、千葉大の学生の平均点をまとめると次のようになります。

Ⅰ リスニング(満点:68点)46.0点
Ⅱ 文法(満点:68点)46.3点
Ⅲ 読解(満点:67点)45.9点
合計(満点:677)※各Sectionの平均を10倍し四捨五入461点
出典:土肥 充(2017)「千葉大学における TOEFL ITP のスコア分析」、『国際教養学研究』、Vol. 1、p. 131


上記のデータによれば、リスニングと文法で0.3点しか差がありません。
日本人が、文法が突出してできるわけではないことがわかるでしょう。

また、TOEFL ITPの公式データ(2015年)によれば、日本人の平均点は460点で、千葉大の1年生とほぼ同じです。

一方、海外の平均点は韓国486点、中国480点、台湾494点、フィリピン535点で、全世界平均点は男性が480点、女性が475点です。
このように、聞き取り、文法、読解といった大学入試に近い形式の試験でさえ、世界の平均点を下回っているのです。

4技能と文法


英語力は「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能に分けて測定されます。

読解を前提とした文法学習は、学習の初期段階では効率的なのですが、やがて伸び悩んでしまいます。

文法を深く理解し、使えるレベルで習得するには、「話す」「書く」といった発信練習が必要です。
簡単な例を挙げましょう。かっこに入る語は何でしょうか?

He (   ) tennis on weekends. 
彼は週末にテニスをします。


かっこに入るのはplaysです。
ペーパーテストであれば、多くの人が正解できるでしょう。

ですが、実際の会話中にplaysと三人称単数現在形のsを付けて話せる人は多くありません。
英語の先生など、英語力に自信がある方でも「三単現のs」を落として話してしまう人はたくさんいます。

なぜ英語力に自信がある人でも、こんなに簡単な文法を間違えて話してしまうのでしょうか。
それは、「読む」「聞く」といった受信では、「三単現のs」に意識を向ける必要がないからです。

例えば、He play tennis on weekends.と書いてあっても、意味は理解できてしまいます。
意味理解に大きな影響を及ぼさない文法は、意識に留めずに、読み流してしまうわけです。

ですから、リーディング(読む)やリスニング(聞く)に偏った勉強をしていると、どうしても動詞の活用などの細かな文法が習得できないままになってしまうのです。

ところが、日頃から英会話や英作文の練習をしている人は、「三単現のs」を付けるのが意外に難しいことを知っています。
sを落として話してしまった悔しい記憶が脳裏に焼き付いているのです。

ですから、He plays tennis on weekends.という一文を見かけたときにも、その悔しさが思い出されて、「三単現のs」が付いていることを確認しながら読むようになります。

このように、日頃から「話す」「書く」練習をしていると、「読む」「聞く」ときの精度も高くなり、学習の効率がよくなります。

ですから、「読む」「聞く」に偏った手っ取り早い学習ではなく、「話す」「書く」といった発信技能を重視して、4技能をバランスよく伸ばしていくことが文法習得の近道なのです。

「話す」「書く」で文法力が伸びる

では、先ほどのテニスの例文を見ずに、次の問題を解いてみてください。

He often plays baseball on (   ).
「彼は週末によく野球をします」


答えはweekends.です。
複数形にできたでしょうか。
単数形にしてしまった方もいるはずです。

彼は今週末も野球をしますし、来週末も野球をします。
したがってweekendsと複数形にするのが普通です。
間違えてしまった方は、画面を上にスクロールしてテニスの問題を確認してください。

最初の問題でもweekendsと複数形になっていましたが、読み飛ばしていたことが実感できると思います。

モニターモデル


英語を話していると、わかっているはずの文法事項を間違えることが頻繁にあります。
これは第二言語習得研究ではモニターモデルと呼ばれています。

例えば、「お金があればいいな」という文脈で、I wish I have money.と言ってしまったとします。
発言して数秒も経たないうちに、haveではなく仮定法過去のhadを使って、I wish I had money.と言うべきだったと自分でミスに気付くのです。

このように、文法書を読んだりして学習した知識は、自分の発話をモニタリングするのに役立つというのがモニターモデルです。

学習によって得た知識を利用して、自分の発話を修正していくことで、正しい文法で話せるようになっていくと考えられています。

わかっているつもりで、習得できていなかったことをあぶり出すために、「話す」という発信の技能が重要な役割を果たすのです。

アウトプット仮説


読解や聞き取りなどのインプットだけでは外国語能力は十分に高まらず、話し相手に理解されるようなアウトプットを試みる必要があるというのが、アウトプット仮説です。

自分の表現したいことと、現在の能力で表現できることのギャップに気付くことが大切だと考えられています。

例えば、会話中にとある高級車の話になったとします。

「もしお金があれば、その車を買うんだけど…」と言いたいけれど、仮定法を使いこなすことができない場合、I can’t buy the car because I don’t have money.「お金がないので、その車を買えません」と言ってコミュニケーションをとるでしょう。

その際に、自分が表現したかったことと、自分の発言のニュアンスにずれを感じます。
そして、「もし…だったら〜なのに」という文法を知りたいと思うのです。

自分のできる範囲の英語を使い、歯がゆい思いをする過程で、理想の英語に近づきたいという意欲が湧いてきます。

もし一度仮定法を習ったことがあれば、会話が終わった後に文法書を調べて、If I had money, I would buy the car.と言えることをおさらいし、次に会話で使えるレベルまで練習することができます。

もし仮定法を習ったことがなく、どのように調べたらいいのかわからない場合は、「もし…だったら〜なのに」と言いたかったのに言えなかったという悔しさを覚えておくだけで十分です。

その後、習ったときに納得できますし、リーディング教材などでたまたま似たような文に出会った時に、インプットされる場合もあります。

まとめ

自分の言いたいニュアンスを正確に伝えられないモヤモヤを味わうと、英語の細かな文法まで意識しながらインプットできるようになります。

そのうちに、受信レベルでは「なんとなくわかる」から気に留めていなかったaとtheの使い分けや、時制の使い分けなどの細かな文法まで意識が向かうようになり、正しい英語を運用する力が付いていきます。

つまり、文法力を高めるためには、文法書を読むだけでは足りず、「話す」「書く」というアウトプットを重視しながら学習を続ける必要があります。

アウトプットで悔しい思いをし、インプットの質を高める好循環を生むことで、正しく自然な英語を身につけることができるようになるのです。

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