「背筋を伸ばして世界を闊歩する人を影で支える」

IKM

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 私は、靴作りを学ぶために世界を目指したいと思います。革靴の本場であるイギリスで勉強し、日本におけるオーダーメイド靴をもっと身近にし人々を足から健康にする手助けをしたいと考えています。
 靴はほとんど誰もが履くものです。しかし靴にお金をかけてオーダーメイドする人は少なく、何となく合う既製の靴を買ってそれを「履きつぶす」ことが多いように思います。かつての私はそうでした。
しかし仕事用の靴を見た目重視で選び、靴に足を合わせるという本来とは逆の選び方をしていたため、私の足は変形し歩く度に痛むようになってしまいました。ですが、それがきっかけで靴職人になるという夢を見つけたので今ではむしろ感謝しています。
 靴選びに気をつけるようになり、歩き方も見直そうとウォーキング教室に通い始めました。背筋を伸ばしてお腹に力を入れて歩くと体だけでなく心も軽くなります。体型も良い方に変わってきてすっかりウォーキングが習慣になりました。
自分の歩き方が良くなると、人の歩き方や姿勢が気になり始めます。年齢や性別に関係なく、堂々と元気よく歩いている姿は周りの人にも元気を与えます。しかし服装がおしゃれでも、猫背だったりひざを曲げて歩いていたりすると良い印象が残りません。その人たちが背筋をピンと伸ばして格好よく歩いていたら本当に魅力いっぱいなのに、とても惜しいと思います。
 更に、正しい姿勢でいることは見た目だけでなく人の健康に大きく影響することは既に知られていますが、意識している人は少ないのもまた事実です。それでも若い内は健康を保てるかもしれませんが、年を重ねるにつれて姿勢が固まってしまい、ただ歩く事も困難になる心配があります。
人は誰もが年を取ります。年齢を重ねるごとに自分の足で歩くことが「当たり前」でなくなっていきます。
最近は健康寿命の延長や予防医療が注目されていていますが、私は心身ともに1番の健康は自分の足でどこへでも歩いて行けることだと思います。
超高齢化社会の避けられない今日、自分の足にあった靴を履いて、良い姿勢で歩くことは健康寿命の延長、ひいては明るい社会に貢献するのではと考えています。
 靴職人との出会いは初心者向けの靴作り教室でした。そこでハンドソーンウェルテッド製法の靴に出会い、革と麻糸というシンプルな材料から、これほど洗練された美しい靴が出来上がる様は衝撃的でした。それ以上に、私が最も興味を持ったのはその機能性、メンテナンス性などの、実用面における完璧さです。100年以上前に完成された製法が今もなお通用するというのは驚きでした。
 上述したように、私は靴をメンテナンスしながら履くという概念を持っていませんでした。どうせ履き潰して捨てるのだから、なるべく安く購入してそこそこの履き心地を求めるものでした。しかし、ハンドソーンウェルテッドの靴を知ってからその価値観は一変し、一生ものの靴には、払った金額以上の価値があると考えるに至ったのです。自分の足専用に作られた靴はストレス無く心地よく履き続ける事ができ、この靴でどこかへ歩いて行きたくなります。更に愛着も出て、大切にしようと思えます。
 今日のファストファッションや100円均一店の台頭に象徴されるように、現代は衣食住における”使い捨て”の潮流に浸食されているように思います。かつての私の価値観は決して特殊なものでは無いのではないでしょうか。勿論、最近では物を直しながら大切に使う文化が見直されているという嬉しい事実もあります。
 しかしながら靴に関しては、日本ではオーダーメイドシューズは一部の人のための特別なもので、その機能性よりもファッションアイテムとしてのステータス的な価値が取り沙汰されることがほとんどであるように思います。言い換えれば、オーダーメイドシューズに対する多くの誤解がはびこっています。その牙城は容易に崩せるものではありませんが、かつてそうであったように物を直しながら大切に使い続ける土壌はあるのだから、「自分専用」の靴の良さ、足の健康の大切さを広く知らしめ、オーダーメイド靴を身近なものにしたいと思います。
 私の作った靴を履いて、女性も男性も堂々と美しく歩いている姿を見られたらこれ以上の喜びはありません。
 イギリスで学ぶ理由は、革靴の製法が生まれた国である他、今もなお進歩を続ける靴業界の情報が発信される場所だからです。オーダーメイド靴を身近にするためには価格の問題は避けて通る事ができません。コスト削減につながるような最新技術も吸収したいと思います。
 そういうわけで私の夢は自分が世界を目指すというよりも、むしろ世界を目指す人たちの足下を支える靴を作る職人になることです。私の作った快適に歩くことのできる最高の靴を履いて、世界を堂々と闊歩する人たちを見るのが私の夢です。

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