去年の夏のことでした。
私は、法律の専門家が読む雑誌をパラパラとめくっていました。一つの記事が私の目を引きました。
「司法書士の連合会が、カンボジア政府と、法律の運用支援の覚書に調印」
私は、背筋に電流が走りました。
「これだ!!」
暗闇から抜け出す手がかりをつかめていない私の夢が、急に視界が開けた瞬間でした。
私は、司法書士をしています。土地や建物を買ったときの名義の変更をする手続き(登記)をしています。「日本」の資格に基づいて、日本で行う仕事です。
日本の資格で仕事をする司法書士が、海外で何をしたいのか?
私は、司法書になった若い人が、海外で仕事ができるように架け橋を作りたい。
閉塞感漂う日本ではなく、どんどん発展する海外で思いっきり仕事をしてもらいたい。
現地の発展にも寄与し、思いっきり活躍してほしい。
そんなことを実現させたいと思い、QQEで英語を勉強しています。
なぜ、国内の資格で仕事をしている司法書士が世界を目指すのか?
それは、国内の現状と海外の状況が、大きな理由です。
●司法書士を取り巻く国内の現状●
司法書士は、土地の名義の変更手続き(登記)をして、日本の経済発展を陰で支えていました。
しかし、土地神話は崩壊し、いまでは空き家が社会問題になっているくらいです。
事実、10年で日本全体の登記件数は4割減っています。
つまり司法書士の市場規模が10年で4割減ったということです。
日本の人口も今後もっと減り、登記はさらに減るでしょう。
今では新しく司法書士になった人が、事務所を出してもなかなか仕事がない。
司法書士業界には閉塞感が漂い、若い人が夢を見ることが難しくなってきています。
●海外の状況●
一方で海外に目を向けると状況が一変します。
中国や東南アジアでは、ここ10年でGDPが5~10倍の伸び、人口もどんどん増えています。
そして、今後40年間に作られる住宅やビル、交通網などの建造物は、これまで人類史上、作られてきた建造物と同じ量になると予測されています。
これらの成長は新興国で多く見られでしょう。
一方で、不動産の権利を確実に取得したい、投資を行う場合も担保を確実に取りたいというニーズがあるはずです。つまり登記のニーズが大量にある。
しかし、人口増加が著しいこれらの新興国は、日本や欧米に比べると法制度の整備が遅れています。
では、もしですが、もし、日本の登記制度をこれらの新興国が導入したらどうなるか?
言葉さえ何とかなれば、日本の司法書士が、今の知識でそれらの国で活躍できるのではないだろうか?
そこで、見つけたのが、冒頭の記事でした。
カンボジアでは、日本の登記制度を導入していました。
日頃から、日本の実情と海外へのチャンスを考えていた私は、その記事を見つけたとき、鳥肌が立ちました。
●私の夢 実現に向けて●
冒頭の記事は、日本の司法書士をカンボジア政府に置き、登記制度の運用に当たらせるというものでした。その司法書士はカンボジアで登記制度の策定に当たった人でした。
私は、その人(女性の司法書士)に会いたいと思い、カンボジアの記事のことをあらゆる人に話しました。そしたら、その女性司法書士を知っている人がいて、そこから、アポを取ることができました。
私は早速カンボジアに飛び、その女性司法書士に私の熱い思いをぶつけてみました。
彼女は、「私は今は役人なので、民間の仕事はできない。法律の専門家が少なくて困っている人がたくさんいる。需要はすごくあると思う」。と言ってくれました。
その彼女から、日本の司法書士の連合会(日本司法書士会連合会)宛に、カンボジアで登記や法的手続きをする担い手を派遣できないか、という要請が、この秋に来ました。
私はすごいチャンスと思っています。
現地事務所を立ち上げるためには、どうするか?
制度的な面は日本司法書士会連合会を動かすしかない。今では、賛同する理事も何名かいます。
後は資金的な面。
進出している日系の企業から賛同を求め、組合のような形で、資金を捻出してもらうことができないかと考えています。
もし、カンボジアに司法書士を派遣することが実現したら、他の国でもできるはずです。
現地の企業も喜ぶ。
それが現地の経済発展にもつながり、現地の人も喜ぶ。
そして、我々司法書士も役に立つことができ嬉しく思う。
「三方よし」で、みんな喜ぶ。
司法書士を海外に派遣するという夢のようなことですが、私は実現に向けこれからもがんばっていきたいです。
最後に、このような夢を語れるチャンスをいただけた、QQEの藤岡頼光代表を始め、関係者の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。