今、私は人生の転換期にいる。結婚、娘の誕生、マイホームの購入、そして転職が続けざまにやってきた。転職先として選んだのは、外資系企業のITコンサルタントである。本稿では、英語が苦手で積極的なコミュニケーションが不得意な私が、日系企業のシステムエンジニアから外資系企業のITコンサルタントへの転職を決めた3つの理由を述べる。
1つ目の理由は、専門的知見を元に私自身の考えを外部へ発信し続けていきたいからである。自分の考えを外部へ発信することは、私にとってうまくいっていない現状を打開する方法であるとともに、ライフワークの一つとして日常的に行っていきたいことである。
私は学生時代、数学などに比べ国語が苦手であったが、ある時を境に好きになった。それは、筆者の意見を自分なりに分析して、それに反対する意見を書いた作文が、先生に褒められたからである。文章を丁寧に読み解き、時間をかけてしっかり考え分析することで、独自の視点が生まれることを知った。それによって苦手意識が楽しさに変わり、その後文章を書くことを通して、自身の考えを深めることができるようになった。また、何か大切なことや納得がいかないことがあるたびに文章を書くようになり、それをアウトプットすることは、寡黙な私を大いに成長させた。
コンサルタントという職業は、専門的知見を用いて物事を分析したり表現を工夫したりして、クライアントに新たな視点や気づき、方向性を与える職業であると私は認識している。システムエンジニアとしてシステム開発に特化したスキルを発展させていくよりは、その知識を活かしてクライアントの現状や過去を分析し、どういう方向に導いたらよいかを、熟考して表現するITコンサルタントを、私は志すようになった。
2つ目の理由は、日本のIT産業に貢献したいからである。日本のIT産業について考えるようになったのは、専門職大学院で技術経営(MOT)を、学んだことがきっかけである。私はシステムエンジニアとして金融業界のユーザに対してITシステムを提供してきたが、日本のIT産業と金融業界は、国際競争力が低い産業である。私は日本人の真面目さや物事に対する真摯な態度、連帯意識、職人気質なところが好きで、これは世界に誇れるものであると考える。だが年功序列や多重下請け構造、ユーザの戦略的IT利活用の不足等、日本のIT産業を取り巻く構造的な課題は、まだ根強く残っている。これを解決していくために、グローバル化の波をうまく利用することはとても重要である。日系企業のグローバル化、外資系企業の日本進出の手助けをすることで、日本のIT産業を支えていきたい。日本のIT技術とその素晴らしい特色を活かして、少子高齢社会やグローバル社会をしっかりと支え、世界に通じるIT産業を作って行きたい。これがグローバル案件に強みを持つ外資系企業を転職先に選んだ理由である。
3つ目の理由は、ワクワクするような新しいチャレンジを求めていたからである。世界が広がり未来へとつながるワクワク感は新しいチャレンジへの原動力であり、何かを成し遂げる上でとても重要な要素である。
大学時代にシステム制御工学科という学科を選んだのは、電気システム、生態システム、金融システムなど、あらゆるものをシステムとして捉え解決に導いていくという考え方が、発展した近未来の姿を想像させ、どんなことにも共通する思考方法にワクワクしたからである。その後ソフトウエアを利用することによって、ロボットを動かしたり難解な数学の問題を簡単に解いたり、またそれらを応用して分析したりコントロールしていく技術に魅力を感じ、システムエンジニアを志望した。
就職後しばらくしてからMOTへ行き、現在はITコンサルタントという新しい職種、グローバル案件を抱えた新しいクライアント、そして英語によるコミュニケーションという新しい世界にワクワクしている。
今、まさに私は人生の転機を迎え、新しい挑戦が始まった。それは自分の中でとことん考えたことを発信してクライアントのニーズに応えること。グローバルに働き日本のIT産業の発展に貢献すること。そしてワクワク感を原動力としてすべてをやり遂げることであり、もうすぐ2歳になるわが子、そして来年生まれてくる第二子のために、価値ある未来を創造することである。